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大津地方裁判所彦根支部 昭和29年(ヨ)17号 判決 1954年7月08日

申請人 近江絹糸紡績株式会社

被申請人 近江絹糸紡績労働組合彦根支部外二組合

主文

一、彦根市西馬場町所在申請会社彦根工場中作業場の地域(別紙図面の赤線を以つて囲繞された部分に該当する地域)及び同地域内所在の建物並びに施設に対する申請会社及び被申請人等の占有を解きこれを大津地方裁判所所属執行吏の保管に移す。

二、被申請人等は前項の土地建物並びに施設内へ立入つてはならない。

三、執行吏は申請会社の請求があるときはその指名する者に対し保管に係る右土地建物並びに施設の用法に従う使用を許さなければならない。

右使用許可のあつた場合被申請人等は穩和な説得以外の方法に依り人の出入及び物品の搬出入を妨げてはならない。

四、執行吏は第一項の地域の境界線中既存の建物、塀その他の工作物に依る境界の区画ができていない部分については速かに適当な材料を使用してその境界線上に高さ約四尺の柵を設置しなければならない。

これに要する費用は申請会社の負担とする。

五、執行吏は第一項の土地建物並びに施設が自己の保管に係ること及び第二項第三項の命令の趣旨を公示するため適当な方法をとらなければならない。

六、申請会社のその余の申請は却下する。

七、訴訟費用は被申請人等の負担とする。

(無保証)

事実

第一、申請の趣旨

申請人訴訟代理人は

一、別紙目録記載の土地並びに建造物に対する被申請人等の占有を解きこれを申請人の委任する大津地方裁判所所属執行吏の保管に移す。

二、被申請人等の組合員は右土地並びに建造物に立入つてはならず又既に立入つている者はこれから退去しなければならない。

三、執行吏は申請人の請求があるときは保管に係る右土地並びに建造物を申請人の指名する者に使用せしめ営業せしめるものとする。

被申請人等は右営業を妨害してはならない。

四、被申請人甲の組合員は食事時間に食堂へ、被申請人甲の連絡員は連絡のため女子寮へそれぞれ立入ることができる。

執行吏は前項の場合以外に被申請人甲の組合員が右土地並びに建造物に立入ることのないように適当な措置を講ずることができる。

との判決を求めた。

第二、申請の理由

申請人訴訟代理人は申請の理由として次の通り陳述した。

一、申請人は肩書地に本店彦根市外六箇所に工場を有し従業員合計一万三千名を擁して絹糸製造紡績業を営む株式会社、被申請人乙は申請人の本店従業員約百三十名を以つて昭和二十九年六月二日組織された労働組合、被申請人甲は申請人の彦根工場従業員約千名を以つて同年六月七日組織された労働組合、被申請人丙は全国各大紡績会社従業員の組織する労働組合を以つて構成されたこれ等労働組合の統制組合である。

二、申請人の彦根工場には以前から同工場従業員二千七百名を以つて組織する近江絹糸紡績彦根労働組合(以下旧組合と略称する)が存在していた。然るところ被申請人乙丙の組合員等約二十名は六月七日午前十一時頃工場長の入門拒否を無視し彦根工場正門の門扉を破壊して同工場内へ乱入して従業員を煽動し、その約千名をして旧組合を脱退の上新組合被申請人甲を結成させた。

三、被申請人甲は結成と同時に組合大会を開き(イ)仏教教育に反対、教育の自由を認めよ(ロ)寮対抗の一切の競技を廃止し寮生に過重な労働を強制するな(ハ)外出の自由を認めよ(ニ)学校選択の自由を認め夜間学生に対し便宜を計れ(ホ)最低賃金の獲得(ヘ)退職金制度を検討せよ(ト)責任者(全員)の身分を保証せよ(チ)彦根工場労働組合を脱退する(リ)本社組合に加入する(ヌ)全繊同盟に加入する旨の十項目の決議をなした上委員長朝倉克已から夏川彦根工場長に対し右決議事項の外に「速座の解答を待つ。以上の決議文に対し良き解答なき場合スト続行す。」と記載した決議文を手交したのみで直ちに無期限ストライキに突入した。

四、これと同時に被申請人甲乙丙の組合員等はピケッティングと称して各作業場の出入口に於て多数スクラムを組み威力に依り旧組合員の入場を阻止してその就業を不能ならしめ或は工場の硝子窓を破壊して同工場の業務を妨害した。

五、依つて申請人は被申請人甲の組合員に対する工場閉鎖を行うの止むなきに至り六月九日午後十一時被申請人甲に対し書面を以つてその旨通告すると共に工場正門前にこの由を記載した貼紙を掲示して工場閉鎖を通告し、同時に同組合員等の彦根工場作業所への入場を拒否するため同組合員等の居住する男子寮と工場との出入口をバリケードを以つて閉鎖し且工場正門を閉ぢて完全な工場閉鎖を実行した。

六、然るに被申請人等は右工場閉鎖を無視して閉鎖区域内に侵入するのみならず更に次のような違法な争議行為をなしている。

(1)、被申請人丙の職員穴井豊記同西田八郎及び被申請人甲の組合員等約百名は六月十日午前二時頃笛を吹き鳴らし乍ら工場正門前に勢揃いした上腕力を以つて正門の門扉を押し破つて工場内に侵入し、右穴井は工場事務所前に於て申請人の設置したマイクの線を切断してこれを損壊した。

(2)、被申請人等は六月十日以降工場正門に厳重なピケを張り申請人の製品の搬出を妨害するは勿論第三者である業者が申請人からの注文品を搬入するのを妨害するのみならず食糧品すら被申請人等の許可を受けなければこれを搬入せしめない。即ち

(イ) 六月十九日午後二時頃訴外神藤ポンプ株式会社社員がボアーホールポンプ一台、渦巻ポンプ二台、モーター三台並びに附属鉄管を彦根工場に納入し工事すべくこれ等を大型トラック一台に積んで正門から入場しようとしたところ正門を完全に占有している被申請人等組合員は正門の内側に頑張つてその入門を拒否しその業務を妨害した。

(ロ) 又六月十九日午後三時半頃彦根工場出入の「いろは」肉店店員小川作美が何時もの如く給食用の肉五貫刄位を工場内に搬入すべくこれを自転車に積んで正門を通過せんとしたところ被申請人等の組合員と海員組合の腕章を付けた者とが同人の顏面を殴打して重傷を負わせた。

(3)、被申請人等は彦根工場裏門及び長曾根門に、申請人が以前から施している錠前の鍵穴に土砂をつめてその効用を失わせた上申請人に無断でそれぞれ他の鍵を施錠し申請人の右各門の利用を不可能ならしめると共に現にこれを完全に占拠している。

(4)、被申請人等組合員はピケッティングと称して現に彦根工場内各作業所出入口にスクラムを組んで立塞り旧組合員並びに非組合員に威嚇を加え或は身体的自由を束縛してその入場を阻止し作業所出入口附近の申請人の占有を完全に剥奪している。

(5)、申請人が六月十八日彦根工場内晒練工場に於て晒練中の綿がバクテリヤ菌の死滅により腐敗するのを防止するための旧組合員約十名を入場させて応急作業を実施中被申請人乙の組合員表純一被申請人甲の支部長朝倉克已は被申請人等の組合員約二十名を引卒して入場し来り右旧組合員を場外に追出し右作業を不能ならしめた。

被申請人等が彦根工場に於て行つているピケッティングは争議破りの組合員等の組合脱落を防ぐ意味の平穩なる監視説得或は争議決定後分裂結成した組合員又はスキヤツプ等を監視するというピケッティングの合法性の限界を著しく逸脱し対象に於て将又その手段に於て違法な争議行為である。

七、申請人は彦根工場を構成する別紙目録記載の土地並びに建造物を所有し且同工場に於ける企業の経営権を有するものでありこれ等に対する被申請人等の侵害並びに妨害行為の排除請求の本訴を提起すべく目下準備中であるがその裁判の確定を待つては回復し難い損害を蒙る虞れがあるので侵害並びに妨害行為の緊急な排除を求めるため本申請に及んだ。

第三、抗弁に対する答弁

申請人訴訟代理人は被申請人等の抗弁に対し次の通り答弁した。

一、第六の甲の一、対抗行為の自由けん欠の抗弁に対する答弁

(1)、(2)の事実は何れもこれを否認する。

(3)の事実中近江絹糸民主化闘争本部なるものが策動していたこと及び被申請人甲乙が各その主張の日時に成立し現に申請人と争議中であることは認めるけれどもその余の事実はこれを否認する。

(4)の事実は認める。

(5)の事実中全繊同盟への加盟承認要求を拒否していることは認めるけれどもその余の事実は否認する。

(6)の事実中申請人が従業員の基本的人権を無視して来たとの点は否認する、被申請人甲の争議目的が何れに在るやは不知。

(7)は被申請人等独自の見解に過ぎない。

二、第六の甲の二、目的の違法の抗弁に対する答弁

(1)の事実中被申請人甲から乙に対する団交委任の点は認めるけれども被申請人乙が十数回に亘り団交の申入をしたとの点及び申請人が団交に応じないとの点は否認する。七月六日から東京に於て団交を開始することに決定していることは周知の事実である。

三、第六の甲の三、内容の違法の抗弁に対する答弁

本件工場閉鎖区域内に女子寮並びに食堂が所在することは認めるけれども組合運動阻害並びに生存権脅威の点は否認する。被申請人の男子組合員の食事については毎食事時間に食堂から調理済の食物を男子寮へ持帰えることを許容する旨工場閉鎖の通告と同時に被申請人甲に対し通告済であり、しかも現実には工場閉鎖後も食堂に於て給食して来た。

四、第六の乙、仮処分理由けん欠の抗弁に対する答弁

申請人が本件仮処分申請に於て被申請人等主張の仮処分を求めていることは認める。爾余は何れも被申請人等独自の見解である。

第四、証拠

申請人訴訟代理人は立証として証人藤田豊松、同遠藤俊夫、同森和一の各証言を援用し、甲第一号証乃至甲第五号証、甲第六号証の一乃至三、甲第七号証の一乃至三及び甲第八号証を提出し乙号各証の成立を認めた。

第五、被申請人等の答弁

被申請人等訴訟代理人は本件申請を却下する旨の判決を求め次の通り答弁した。

一、第二の一の事実は何れもこれを認める。但し被申請人乙の現在の組合員は百五十五名、被申請人甲のそれは二千二百名である。

二、第二の二の事実は新組合結成の経過の点を否認し、その余は何れもこれを認める。

三、第二の三の事実は新組合結成前の争議団の行為としてこれを認める。

四、第二の四の事実中ピケッティングをした点は認めるけれども威迫暴行の点は否認する。

五、第二の五の事実は書面に依る通告の点を除きこれを認める。

六、第二の六の事実中

(1)については西田八郎を除く申請人主張の組合員がその主張の日時彦根工場内へ入場したことは認めるけれども爾余の事実は何れもこれを否認する。工場正門は申請人の守衞が右組合員等の要求を容れ自らこれを開門したものである。

(2)の(イ)については申請人主張の日時神藤ポンプ株式会社のトラックが工場正門迄来てその儘引返えしたことは認めるけれども入門拒否の点は否認する。右は被申請人等のピケ隊が争議中故入場を差し控えられ度い旨極力説得勧告に及んだ結果これに応じて引揚げたものである。

(2)の(ロ)の事実は認めるけれどもその際の事情は次の通りである。即ち被害者の小川がピケ隊の監視の目をくぐつて正門横より秘かに工場内に入ろうとしているのをピケ隊の一人が発見し用件を尋ねたところこれに反抗的態度を示したため争論となつたものであり争議関係中の偶発的エピソードともいうべきものであつて、この事実あつたが故に被申請人等の争議行為を全体として違法ならしむるものでないことは判例の枚挙に暇のない所である。

(3)の事実中錠前の点は何れもこれを認めるけれどもこれは前に申請人が暴力団を裏門等より工場内へ入れようとした事実があつたので組合の自衞上又暴力団との無用のトラブルを避けるため行つた行為であつて申請人の云うが如く占有を移すことを目的としたものでもないし亦占有というが如き程のものでもない。

(4)の事実中ピケッティングをしていることは認めるけれどもその余の事実は何れもこれを否認する。ピケ隊は何れも旧組合員等に作業の中止を勧告するため十数名の小人数を以つて配置されている。

(5)の事実はこれを否認する。作業中の旧組合員等はピケ隊の説得に依り自ら退場したものである。

七、第二の七の事実中申請人が彦根工場の土地建物を所有し且その経営権を有することはこれを認める。

第六、被申請人等の抗弁

被申請人等訴訟代理人は次の通り抗弁した。

甲、工場閉鎖の無効

本件工場閉鎖は下記何れの理由よりするも違法にして無効のものである。

一、対抗行為の自由けん欠に因る無効

(1)、申請人の労務管理の封建性並びに労働条件の劣悪

申請人は予て極端な封建的労務管理体制の下に従業員に奴隷的作業を強制し、その人権と自由を無視拘束して来たものであつてその労働条件も他に類例を見ない低劣なものであつた。これを具体的にいえば十大紡績会社の平均賃金月額一万三千円に対し申請人のそれは五千五百円に過ぎず、労働基準法を無視蝉脱した業務体制により労働時間を不当に延長し時間外勤務手当を支払わず、寄宿舍の自治を侵害し、仏教の信仰並びに礼拜を強制し、婚姻の自由を阻害し、夫婦の別居生活を強制し、就学の自由を阻害し、信書を開披し、寮内に於ける私物検査を強行し、密告者報償制度を実施し、外出を制限し、因つて所轄労働基準監督署から警告を受けた事例は枚挙に暇がない。

(2)、旧組合の御用組合性格

旧組合は申請人の意図を受けて結成し育成された自主性も民主性も持たない御用組合である。即ち単独組合として如何なる全国的連合体にも加盟せず専ら申請人の労務統制のために存在し、組合幹部は何れも職制上の役付がこれを占め申請人と一体となつて組合を支配し、組合員の一切の発言を封じて独断的に事を行い従業員の真摯な組合活動を監視し、苟くも申請人に対する不満を口にする者は申請人に通じて苛惜なくこれを解雇せしめ或は組合から除名してユニオンシヨップ条項に依りこれを解雇させて来た。

(3)、新組合の結成

従業員中には旧組合の御用組合性にあきたらず予て申請人の封建的労務管理の改善並びに組合民主化運動を強力に推進していた近江絹糸民主化闘争本部と呼応して民主的新労働組合の結成準備に着手する者もあつたが、申請人はその都度当該従業員を解雇して新組合の結成を抑圧して来た。然し乍ら申請人の異常な封建性と人権無視の労働条件下に多年呻吟して来た従業員は被申請人丙の強力な支持と指導の下に昭和二十九年六月二日先ず本店に於て蹶起して被申請人乙を結成し、次いで六月七日彦根工場に於て被申請人甲を結成し何れも不当な労務管理の撤回を要求して申請人との間に争議を持つに至つた。

(4)、被申請人甲の要求事項

被申請人甲は本件争議に於て申請人に対し次の二十二項目を要求している。

(イ) 被申請人甲の即時承認

(ロ) 旧組合の即時解散

(ハ) 申請人とその指名に係る労働代表者との間になされた一切の協約の廃棄

(ニ) 拘束八時間労働の確立

(ホ) タイムレコーダーの即時復活、残業手当の支給並びに賃金体系の確立

(ヘ) 合理的な退職金、旅費、宿直費規定の設定

(ト) 有給休暇、生理休暇の完全実施

(チ) 食堂の完備、更衣室の新設、社宅並びに寮設備の改善拡充、福利厚生施設の充足

(リ) 宿直室の完備、専門宿直員専門掃除夫各寮専属炊事係の即時配置

(ヌ) 仏教の強制廃止

(ル) 夜間通学等教育の自由の承認

(ヲ) 結婚の自由の承認並びに夫婦別居生活強制の廃止

(ワ) 文化活動の承認

(カ) 各種対抗競技の廃止

(ヨ) 信書の開封並びに私物検査の即時停止

(タ) 密告者報償制度、スパイ活動並びにスパイ活動の強要の廃止

(レ) 外出の自由の承認

(ソ) 月例首切りの廃止

(ツ) 最低必要人員の即時補充

(ネ) 人格無視の言動並びに仕末書濫発の禁止

(ナ) 自動車部員の社内寄宿の廃止

(ラ) 自動車に対する傷害保険の即時加入

(5)、右要求事項に対する申請人の態度

申請人は右要求事項に対し極めて頑迷な態度を持し、被申請人甲を認めず且その全繊同盟(被申請人丙)への加盟を承認せず、事態の円満な解決を期する意思は毛頭認められない。

(6)、本件争議の特殊性

本件争議の目的は自主的民主的労働組合の結成並びに従業員の不当に抑圧されて来た市民としての亦労働者としての基本的人権の回復乃至確立にある。斯かる要求は既に憲法の保障する所であり敢て他人の承認を要するものでもなく亦他人の承認に依つて始めて発生する筋合のものでもないのであるが而も猶被申請人甲が斯かる市民法労働法以前の要求を掲げざるを得なかつたのは申請人の従来の労務管理が現実にこれを無視して来たためであつて右要求は申請人に対しこれが履行の誓約を求める極めて悲痛な人間的叫びであつて他の争議に見られるような単なる労働条件の維持改善という経済的要求にあるのではない。

(7) 対抗行為の自由のけん欠

そもそも労働者の争議行為に対抗してなされる使用者の対抗行為の自由は労働力の取引の自由にその基礎を持つものであつて労働法上又は憲法上当然の要求である自主的民主的労働組合の結成並びに基本的人権確保の要求については単なる経済上の要求と異なり使用者は本来これを承認するとしないとの自由を有しない。

従つて本件工場閉鎖は使用者の対抗行為の自由の範囲に属しないものであり違法且無効である。

二、内容の違法に因る無効

申請人は本件工場閉鎖に依り被申請人甲の男子組合員に対しその食堂並びに女子寮への通行を遮断した。而てこの食堂並びに女子寮の閉鎖を含む本件工場閉鎖は右組合員に対し食事条件上の差別待遇を加えてその切崩しをなす目的を以つてなされたものであり且現実に同組合員の生存権に重大な脅威を与えると共にその正当な組合活動の自由を阻害している。本来使用者の対抗行為としての工場閉鎖は労働者を工場の生産手段から切り離しその賃金の不払に依つて労働者の争議行為に対抗することを本質とするものであるから本件工場閉鎖が右の如き目的の下に実施せられ且右の如き結果を発生せしめている以上その違法にして無効なことは明瞭である。

三、目的の違法に因る無効

(1) 団体交渉の拒否

被申請人甲は組合結成と同時に彦根工場長に対し要求事項を提出すると共に団体交渉を申入れたが彦根工場長は右要求事項に対する諾否の決定権限を有しなかつたため六月八日団体交渉権を被申請人乙に委ね申請人の本店に於て統一的一元的に団体交渉をすることにした。而て被申請人乙は爾来十数回に亘り申請人に対し団体交渉の申入れをなしたにも拘らず申請人はこれに応ぜず社長はその所在さえ晦ましてこれを回避しているのであつて申請人に争議解決の意思は認められない。

(2) 新組合員に対する切崩

申請人は新組合(被申請人甲)員に対しその全員解雇をほのめかし、その父兄を呼寄せて新組合脱退を強制させ、工場内に暴力団を横行させて新組合員を威迫する等あらゆる手段を尽して新組合員の切崩しを図つている。

(3) 目的の違法

右の如く申請人は一方に於て工場閉鎖をし乍ら他方に於て団体交渉を拒否し且新組合員の切崩しを図つているのであつて結局本件工場閉鎖は争議解決の意思なくして専ら新組合の組織の崩壊を策するためになされたものである。而て斯かる違法な目的を以てなされた工場閉鎖はそれ自体違法にして無効なものといわなければならない。

乙、仮処分申請理由のけん欠

申請人は本件仮処分申請に於て被申請人組合員等に対する(イ)工場への立入禁止(ロ)工場内からの退去(ハ)業務妨害禁止の仮処分を求めているのであるが斯かる申請は下記の理由に依り失当である。

(1)  争議行為の事実行為性

申請人は所有権に基き彦根工場の工場閉鎖をしたことを右仮処分申請の理由としているのであるが工場閉鎖が工場閉鎖の実質を事実を以つて充足しなければならないものであることは既に通説である。本来争議行為は労働者のそれも使用者のそれも意思表示を以つて内容とするものでなく事実行為であるのであるからその発現は主体自らの力に依つてなさるべきものであつて法の救済に依るべからざる性質を有する。然るに申請人はそのなした工場閉鎖の維持を本件仮処分の救済に仰ごうとしているのであつてその申請は失当といわなければならない。

(2) 争議行為の正常業務運営阻害性

本来労働者の争議行為は使用者の業務の正常なる運営を阻害する行為であつて右の如き内容を持たないものは既にして争議行為ではない。然る限り本件ストライキに依り申請人の正常な業務運営の支柱となつている申請人の工場土地建物に対する所有権の日常的機能が阻害されることは当然であつてこれを以つて所有権の侵害ということはできない。この意味に於ても本件仮処分申請は理由のないものである。

第七、証拠<省略>

理由

当裁判所は本訴に顕われた全疎明資料を綜合し且周知の事実を参酌し一応次の通り事実を認定し次の通り判断をする。

第一、本件争議発生に至る迄の経過

申請会社は大阪市に本店、彦根市西馬場町外六箇所に工場を有し従業員合計一万三千名を使用して絹糸製造紡績業を営み近時飛躍的な発展を遂げて我国十大紡績会社と完全に比肩するに至つた会社であり、被申請人丙は右十大紡績会社従業員の組織する各単位労働組合の連合団体である。然るところ申請会社は本来社長一族の同族会社として発足したものであり現在も会社の首脳部を社長一族を以つて占めている同族会社的性格の会社であるためかその社風に兎角同族会社に有り勝ちないわゆる封建的な面も認められ又短期間内に驚異的な発展を遂げた蔭には労務管理労働条件の不備不良の点のあつたことも見受けられ現にその労働条件は十大紡績のそれと比較すれば可成り劣つている。他方十大紡績の従業員を傘下に持つ被申請人丙は予て申請会社の従業員をも自己の傘下に收めようと欲し昭和二十四年初頃近江絹糸斗争委員会を設けて申請会社の従業員に呼び掛け近江絹糸第二組合を結成させた上その育成を図つたが同組合は申請会社の圧迫もあつて漸次組合員に脱落者を生じ昭和二十六年頃事実上の消滅を遂げた。そこで被申請人丙は右委員会を通じて申請会社の労務管理の封建性労働条件の不良等を衝いてその従業員等に呼び掛け申請会社もこれに対抗して被申請人丙と意を通ずる従業員に対しては解雇等の強硬な態度を以つて臨んで来ていたのであるが昭和二十九年六月二日申請会社本店に於てその従業員約百三十名が被申請人丙の右呼掛けに応えて立上り新組合被申請人乙を結成して程なくストライキに入りこれに刺激されて申請会社彦根工場に於ても六月七日午前二時頃深夜番男子従業員百五十名が一斎に職場を放棄して他の従業員に新組員の結成を呼び掛け、応援に駈けつけた被申請人丙乙の組合員約二十名の指導の下に同日午前十一時頃千二、三百名の従業員(同工場の全従業員は二千七百名)を以つて被申請人甲を結成した。而て被申請人甲は即時組合大会を開き新組合の承認旧組合の解散等二十二項目に亘る要求事項(事実の項第六の甲の一の4掲記の通り)を決議すると共に直ちに無期限ストライキに突入した。

第二、工場閉鎖に至る迄の経過

被申請人等は右ストライキ突入と同時に彦根工場内各作業場の出入口に強力なピケ隊を派遣常駐せしめ作業のため入場しようとする旧組合員をスクラム等に依り威圧し或は直接これを押し返えしてその入場を阻止して来た。依つて六月七日には旧組合員が再三に亘つてピケラインの突破を試みた末漸く約三百名が絹糸工場へ入場し得たのみで他は何れも入場できず、六月八日以降は各作業場共右ピケ隊に依り完全に入場を阻止され申請会社の彦根工場に於ける操業は全面的に停止した。そこで申請会社は右ピケ隊を各作業場の附近から排除して旧組合員に依る操業を開始し併せて賃金の不払を以つて被申請人甲の組合員に対抗せんがため六月九日午後十一時頃被申請人甲に対し工場閉鎖の通告をなすと共にその男子組合員の居住する男子寮と作業場とを結ぶ通路並びに工場正門に有刺鉄線に依るバリケードを構築してこれを閉鎖し同組合員等の入場を遮断した。

第三、工場閉鎖に関する抗弁に対する認定並びに判断

一、対抗行為の自由けん欠の抗弁について

(1)  憲法の保障する基本的人権を尊重すべきことはそれ自体としては何人に於ても異論のあるべき筈のものでないのであるけれども争議行為は具体的紛議の解決手段なのであるから具体的紛議の存在を前提とすることなくしてストライキに依り基本的人権尊重の誓約を要求することは許されない。又斯かる要求を受けた者がこれを拒絶するは至極当然であり何等奇とするには当らない。何んとなればストライキに依り要求を受けてその誓約をなすならば社会から現実に基本的人権を侵害して居りその非を認めたものとしていわれなき誤解を受けるは必定だからである。従つて被申請人等が真に本件ストライキに依り申請会社に対し基本的人権尊重の誓約を要求するというのであれば先ずその前提として申請会社が現に従業員の基本的人権を侵害しているか或は現に侵害せんとしている事実を具体的に摘示するを要する。殊に基本的人権はそれが重大な権利であればあるだけにその尊重誓約の要求換言すればその侵害に対する非難をなす事は相手方の名誉信用にも至大の影響を及ぼすべきものであるからその事実摘示が一段と明確なるべきは条理上当然の事柄に属する。然るに被申請人等はこの点に関し何等の具体的事実主張もなすことなく唯疎明資料として乙第七号証「現代女工哀史近江絹糸の労務管理をつく」と題する小册子を提出するのみである。而て同小册子には「申請会社は従業員が結婚すると直ぐ他へ転勤させ、同人が転勤先で苦労して住居を見付けて妻を呼び寄せると再た他へ転勤させ結婚の自由を阻害している」という類の記事が登載されているのであるけれども既に同記事自体日時場所人の特定を欠き甚だ具体性に乏しいものであるのみならず元来同小册子は被申請人丙がいわゆる近江絹糸民主化斗争推進のため近江絹糸斗争委員会に編輯させ自己の組織部から発行したものであつて結局被申請人丙が本件争議のために作成したものに外ならないのであるから同小册子に右のような記事があつたからとてたやすくこれを措信できる訳のものでもない。従つて被申請人等の基本的人権尊重誓約の要求は前提要件を欠き要求自体失当のものであるから申請会社に於てこれを承認しないからとて対抗的争議行為の自由を喪失すべきいわれはない。

(2)  被申請人等のいわゆる自主的民主的労働組合結成要求はこれを具体的にいえば(イ)新組合を承認せよ(ロ)旧組合を解散させよ(ハ)新組合の全繊加盟を承認せよということになるのであるが(ロ)の要求は結局申請会社に対し不当労働行為を敢行せよと要求するものであつてそれ自体不法の要求であり又(ハ)の要求は先の近江絹糸第二組合の轍を履まざるための配慮に出たものとは認められるのであるけれども全繊同盟への加入が自主的民主的労働組合の成立に必要不可欠のものとは認め難いのであるから申請会社に於てこれを承認しないからとてそれが公序良俗に違反し因つて対抗的争議行為の自由の喪失を来すべきものとは認められない。

二、目的の違法の抗弁について

(1)  被申請人甲は団体交渉を申請会社本店に於て被申請人乙の団体交渉と併せ統一的に行うこととし六月八日団交権限を被申請人乙に委ねた。右委任を受けた被申請人乙は申請会社に対し六月九日、十日、十四日、十六日にそれぞれ団交の申入をなし申請会社からもそれぞれ応諾の回答はあつたのであるけれども団交の場所、人員殊に組合側の交渉委員に被申請人丙の役員を加えるか否かの点につき双方の意見の一致を見ず右団交は遂に実行されるに至らなかつた。而て六月十六日に至り当事者間に団交に関する協定が成立し六月十七日午後五時から七時まで堂島寮に於て会社側から夏川社長外四名、組合側から渡辺組合長外二名及び全繊役員二名出席の上団交を開始することになつたのであるが当日に至り会社側から労働省基準局職業技能課長から社長に面会の申込のあつたことを理由として夏川社長の欠席を申出でたため組合側では同団交を拒否した。而て夏川社長はその後何れかへ逃避して消息を絶ち、組合側に於ても同社長の出席しない団交を拒否したため申請会社と被申請人甲(受任者被申請人乙)との団体交渉は暫時開始されるに至らなかつたのであるけれども、過般労働大臣の委囑を受けた斡旋委員の斡旋に依り七月六日から東京に於て団体交渉が開始されることに決定している。而て夏川社長の右逃避は人権斗争スト宣伝に依つて激発された社会の悪感情が平静化し工場の混乱状態が終熄する迄団交を回避する意図の下に行われたものと推測される。

(2)  申請会社は本件ストライキ勃発直後一部従業員の父兄を電報で呼寄せたのであるけれども、被申請人等主張の如くこれ等の父兄をしてその子弟に新組合脱退を強制させたか否かは詳かでない。又申請会社が被申請人甲の組合員に対し全員解雇をほのめかしこれを威迫したとの点については疎明がない。而て申請会社は六月十三日及び十四日の両日彦根工場へ下村組の人夫と称する暴力団的人夫数十名を入場せしめたものであるがこれを入場せしめた目的については一面に於ては被申請人等の主張する如く新組合員等に対する示威のためであり、他面に於ては申請会社の主張する如く新組合員の暴力的争議行為に対する自衞のためであつたものと認められる。

(3)  而て右1、2の認定事実を綜合するも未だ本件工場閉鎖が争議解決の意思なく専ら新組合の崩壊を計ることを目的としてなされたものとは認め難い。

三、内容の違法の抗弁について

(1)  本件工場閉鎖区域には被申請人等の指摘する如く食堂並びに女子寮が包含されている。工場閉鎖の本質は労働力を生産手段との結合から排除する点にあるのであるから従業員の日常生活の場所である寮とか食堂に対する工場閉鎖は違法であり、本件工場閉鎖はこの点に於て瑕疵がある。

(2)  依つて右瑕疵が本件工場閉鎖の効力に及ぼす影響について考察するのに、申請会社は本件工場閉鎖の通告と同時に被申請人甲に対し男子新組合員の食事は毎食事時間に食堂から男子寮へ持帰つた上寮内に於てこれを摂るよう通告しているのであるし、更にその直後警察の勧告に応じて同組合員に対しても従前通り食堂に於て給食することに予定を変更し、翌朝食からその通り実行しているのであるから被申請人等の主張する如く右食堂に対する閉鎖が新組合員の生存権に脅威を与えたというが如き事は全く有り得ないのであり、又申請会社に新組合員に対し食事条件上の差別待遇を加えてその切崩しを図る意図があつたものとも認められない。而て女子寮に対する工場閉鎖が本来女子寮居住者を対象とする新組合員の組合活動を阻害すべきものであることは論を俟たない所であるけれども右組合員等は工場閉鎖実施の僅か三時間後の六月十日午前二時頃閉鎖線を突破して閉鎖区域内へ侵入し、爾来今日に至る迄全然自由に閉鎖区域へ出入して来ているのであるから右女子寮に対する閉鎖が新組合員の正当なる組合活動を現実に阻害したというが如きことも亦有り得ないことである。而て右瑕疵が上記の如く閉鎖を受けた新組合に対し何等の不利益をも及ぼしていない点と更に右瑕疵が何等不法の目的に出でることなく、単に工場閉鎖の本質に対する理解の不足から招来された過失行為と認められる点及び瑕疵に係る区域が小部分に止まる点とを綜合考察するときは右瑕疵は本件工場閉鎖の全面的無効を招来することなく、単に瑕疵に係る区域につき工場閉鎖の効力を発生しないに止まるものと解するを相当とする。依つて本件工場閉鎖は彦根工場中作業場の区域については有効に成立しているのであり、その具体的範囲は別紙図面の赤線を以つて囲繞された部分に該当する地域と認める。

第四、被申請人等に係る工場閉鎖侵害の主張に対する認定並びに判断

(1)  被申請人等組合員約百名は本件工場閉鎖実施三時間後の六月十日午前二時頃大挙して彦根工場正門に押し掛け同所に構築されたバリケードを破壊して工場内へ侵入し且工場事務所前に設置されていたマイクの線を切断した。

(2)  右同時刻頃被申請人等組合員の別の一隊は男子寮と作業場との通路に構築されたバリケードを破壊して工場内へ侵入した。

(3)  被申請人等は六月十日以降十七日迄は工場正門前道路に於て、六月十八日以降は工場正門内側に於て常時鉢巻姿の男子組合員約二十名を以つてピケットラインを張り正門の出入者を検問して好ましからずと認めた者に対しては示威に依りその出入を阻止し、殊に旧組合員に対しては「新組合へ加入せねば通さぬ」と申し向けてその出入を阻止している。

(4)  被申請人等は工場閉鎖後も工場内各作業場の出入口に晝夜二交代延五百名の男子組合員を以つてピケットラインを張つている。現在旧組合員との間にトラブルを生じていないのであるけれどもこれは旧組合員が既にピケ隊の威力に怖れをなし全然近寄らないのに因るものである。

(5)  被申請人等組合員は六月十五日申請会社が彦根工場正門に張つた有刺鉄線をクリッパーを以つて切断し、且正門の門扉をもぎ取り更に正門附近にあつた申請会社所有のトラックを多数の暴力に依り横転させた。

(6)  被申請人等は六月十五日頃申請会社が彦根工場の裏門及び長曾根門に施している錠前に鍵穴から土砂を入れてその効用を失わせた上、擅に自己の錠前を取付け且爾来男子組合員約二十名より成る監視隊を附近に常駐せしめて他人を近付かしめず以つて申請会社の右各門に対する管理権を完全に侵奪している。

(7)  申請会社が六月十八日彦根工場内晒練工場に於て晒練中の綿がバクテリヤ菌の死滅に依り腐敗するのを防止するためピケ隊の隙を窺い旧組合員約十名を入場させて応急作業を実施中、被申請人等の組合員約二十名が場内へ侵入して右旧組合員等の腕をとつて場外へ引張り出した上これに罵倒を加えた。

(8)  訴外神藤ポンプ株式会社社員が六月十九日午後二時頃、申請会社彦根工場へ納入すべきボアーホールポンプ一台、渦巻ポンプ二台、モーター三台及びその附属鉄管を大型トラック一台に積載して同工場正門迄赴いたところ被申請人等の正門ピケ隊は威力を示してその入門を阻止した。

(9)  申請会社彦根工場出入の「いろは」肉店店員小川作美が給食用の肉約五貫刄を同工場へ納入すべくこれを自転車に積載して正門を通過せんとしたところ、被申請人等の組合員は同人の顏面を欧打し、因つて同人に対し縫合三針を要する傷害を加えた。

二、本件工場閉鎖が申請会社彦根工場作業場の区域につき有効に成立していることは前示の通りである。工場閉鎖は使用者に認められた争議権の行使であるから既に工場閉鎖が実施された以上閉鎖区域内へ立入ることの許されないことはいう迄もない。被申請人甲の組合員等の上記の争議行為は先ずこの点に於て違法である。被申請人丙乙の組合員等は何等申請会社彦根工場の従業員でないのであるから工場閉鎖の有無に拘らず同工場の所有者にして管理権者である申請会社の意思に反して同工場内へ立入ることを許されない。従つて被申請人丙乙の組合員等の前記所為も亦先ずこの点に於て違法である。更に右門扉の破壊、トラックの横転、門の占拠及び第三者である旧組合員等に対する威嚇ピケは何れも争議行為としての合法限界を著しく逸脱した違法行為であり、暴行傷害に至つては既に論外である。

第五、仮処分理由けん欠の抗弁に対する判断

一、工場閉鎖が意思表示の外に事実行為に依る充足を必要とすること及び右事実行為の充足が使用者自身によつてなされることについては異論はないけれども、申請会社が本件仮処分申請に於て求めているのは既に有効に成立している工場閉鎖に対する侵害の排除であつて工場閉鎖の成立要件たる事実行為の充足ではない。而て本件工場閉鎖につき事実行為に依る充足がなされたことについては既に第二項に示す通りである。

二、争議行為が相手方の業務の正常な運営を阻害する行為であり、その性質上自ら右業務の支柱となつている所有権の日常的機能を阻害することのあるべきものであることは所論の通りである。然し乍ら右阻害に対する免責は争議行為が合法限界内のものであることを前提要件とする。而て被申請人等の本件争議行為が合法限界内のものでないことは前項に於て判断した通りである。

第六、仮処分の必要性

申請会社彦根工場には現在旧組合員千余名が待機しており、申請会社は何時でもこれ等旧組合員に依り同工場の操業を開始し得る状態に在る。然るにも拘らずこの儘操業不能の状態が継続するに於ては申請会社に著しい損害の生ずるは必然である。且又前示の如き著しい法秩序の破壊状態を本案判決確定迄存続せしめることは許されないものと認める。

従つて申請会社の申請を彦根工場作業場の地域についてはこれを許容し、食堂並びに女子寮の地域についてはこれを却下し、仮処分の内容につき民事訴訟法第七百五十八条第一項、訴訟費用の負担につき同法第九十二条但書、第九十三条第一項本文を適用の上主文の通り判決する。

(裁判官 前田亮)

(別紙省略)

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